停電になったら、冷蔵庫の中身はどう守る?発泡スチロールと保冷材でできる「簡易保冷」を検証しました
災害時、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは水や食料の備蓄かもしれません。けれど、停電が起きたときに見落とされがちなのが「すでに冷蔵庫にある食材」をどう守るか、という問題です。
WILLTEXでは、防災士・森下園子先生(ポリCOOK®代表/日本災害食学会専門員)監修のもと、特殊低温保冷剤「ICE ARMOR(アイスアーマー)」と身近な発泡スチロール箱を使い、「停電時の簡易保冷環境」がどれくらい食品を守れるのかを検証しました。
※この内容は2026年8月28日、日本災害食学会2026学術大会でも発表しています。
きっかけは、森下先生が経験した停電
検証のきっかけは、監修いただいている森下園子先生ご自身の体験でした。豪雨・落雷による停電を経験された際、冷蔵庫の開閉をできるだけ控えていたにもかかわらず、庫内温度は約14℃まで上昇していたそうです。
内閣府の資料でも、停電時の冷蔵庫対応について指摘されています。
このご経験をきっかけに、「在宅避難のときに、家庭ですぐ実施できる簡易保冷手段にはどのくらいの効果があるのか」を森下先生監修のもとWILLTEXで検証することにしました。使用したのは、内閣府「令和7年度 官民連携による避難所運営の質の向上強化事業」に採択された保冷材「ICE ARMOR」です。
検証1:保冷材、何個・何℃で凍らせるのが効果的?
まず確認したのは、保冷材そのものの冷却性能です。
条件
- 環境温度:40℃(酷暑日を想定)
- 容器:発泡スチロール箱
- 保冷材:1kg(0個・1個・2個)
- 凍結条件:0℃凍結/−10℃凍結
- 評価項目:温度上昇の推移、保冷持続時間
結果
保冷材なしでは、10分で37℃まで上昇し、20分後にはほぼ環境温(39℃)に到達しました。一方、0℃凍結の保冷材を1個入れた場合は、開始2分後には22℃まで低下し、以降30分間は22〜25℃という狭い範囲で安定して推移しています。−10℃で凍結した保冷材は初期の冷却効果が高いものの、保冷が持続する時間はより短いことも確認されました。
この結果から、「急激に冷やす」よりも「長時間じわじわ効かせる」ほうが、災害時の食品保管には向いていることがわかります。
検証2:発泡スチロール箱+ICE ARMORで、食材はどれだけ守れる?
検証1で有効性が確認できた「0℃凍結」の保冷材を使い、実際に食材を入れた状態で検証しました。
用意したもの(100サイズの発泡スチロール箱1箱あたり)
| 品目 | 数量 |
|---|---|
| 豚薄切り肉 | 2パック(206g、192g) |
| 塩シャケ | 1パック(2切れ、159g) |
| 牛乳 | 2本(1ℓ×2) |
| ヨーグルト | 2個(400g×2) |
| バター | 1個(100g) |
| チーズ | 1袋(120g) |
| 納豆 | 3パック(45g×3) |
設置のルール
- 食材は保冷材に直接触れないよう2段目に配置(冷蔵庫から出した肉の初期温度は7℃)
- 冷気は下に下がるため、保冷材(ICE ARMOR 1個)は一番上に設置
- 温度計を2本設置し、箱内の温度と食材の温度をそれぞれ計測
結果
開始1時間以降、4時間にわたって食材の温度を10℃以下に維持することができました。さらに21時間が経過した時点でも、箱内は29℃、食材は24℃と、環境温度(40℃)を大きく下回る状態を保っています。
なお、この検証では13〜17時間の間は計測を実施できておらず、データが欠落している時間帯があります。この点は今後の検証課題です。
検証1×検証2を重ねてみると
2つの検証結果を1つのグラフに重ねると、「保冷材だけ」の場合と「保冷材+食材」の場合の違いも見えてきます。食品を入れない状態でも、保冷材1個を入れるだけで20分後の温度上昇を24℃程度に抑えられました。食品と保冷材を両方入れた状態では、箱内17℃・食材7℃という、より安定した保冷状態を実現しています。
学会で寄せられた質問・ご意見
学術大会の当日、フロアの参加者からもいくつかご質問・ご意見をいただきました。
Q. 停電時、冷蔵庫へはどのくらいの時間で対処すべきか。
2時間が目安です。冷蔵庫内温度は約14℃まで上昇したものの、食品の状態に問題はありませんでした。
また、2026年7月の熊本地震の避難所では、食事の配給に発泡スチロールが使用されており、比較的入手しやすかったというお話もいただきました。個人用の小型の発泡スチロールに飲料と保冷材を入れ、避難所の個人スペースで管理できると良いというご意見もあり、小型の発泡スチロール容器でどのくらいの時間、冷蔵状態を維持できるかは、今後の検証テーマとして検討していきたいと考えています。
災害時のICE ARMORの活用アイデア
今回の検証は「食品の保冷」がテーマでしたが、ICE ARMORはそれ以外の場面でも活用できます。
- 熱中症対策・快適性の向上:ICE ARMOR本来の目的です。屋外作業や避難生活時の体調管理にお使いいただけます。
- 食料の確保と鮮度維持:今回ご紹介した、簡易保冷環境としての活用です。
- 温度管理が必要な医薬品の保管:インスリンなど、保冷が必要な医薬品の一時保管にも応用できます。
まとめ
0℃凍結のICE ARMOR1個を発泡スチロール箱の上段に設置することで、箱内の食材温度を4時間にわたり10℃以下に維持できることを確認しました。21時間後でも箱内29℃・食材24℃と、環境温度を大きく下回る保冷効果が持続しています。
停電は、いつ・どのくらいの時間続くか予測できません。だからこそ「冷蔵庫を開けない」という受け身の対策だけでなく、身近な発泡スチロールと保冷材を使って積極的に温度を守るという選択肢を、ぜひ知っておいていただければと思います。
学会発表の詳しいレポートは、森下園子先生のブログでもご紹介いただいています。あわせてぜひご覧ください。
「日本災害食学会 2026学術大会」開催報告|森下園子先生ブログ
監修:森下園子(ポリCOOK® 代表/防災士・日本災害食学会専門員)
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