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真夏の災害、備えるべきは「暑さ」と「水」― 防災士・森下先生に聞く、熱中症対策と水の備蓄

2026年7月末、真夏の最中に大きな地震が起きました。エアコンの効かない場所で夜を明かす、炎天下で片付けをする——そんな状況が現実に起きています。

「防災」というと、水や食料の備蓄、家具の固定などを思い浮かべる方が多いと思います。けれど夏の災害では、それらと同じくらい「暑さから身を守ること」が命に直結します。

今回WILLTEXでは、防災士の森下先生に「夏の防災と熱中症対策、そして水の備蓄」について教えていただきました。その内容を、ご家庭ですぐに実践できる形にまとめてお届けします。

真夏の災害、備えるべきは「暑さ」と「水」防災士・森下先生に聞く熱中症対策と水の備蓄

過去の大震災は「冬」。水道の復旧には時間がかかる

阪神・淡路大震災は1995年1月、東日本大震災は2011年3月。日本で防災が大きく語られるきっかけになった災害は、どちらも寒い季節に起きています。そのため「災害=寒さ対策」というイメージが強くなりがちです。

けれど、ライフラインの復旧には想像以上の時間がかかります。水道が9割復旧するまでに、阪神・淡路大震災では37日、東日本大震災では24日を要しました。今後想定されている首都直下地震では、電気は約1週間、水道1か月、ガスは約2か月止まる可能性があるといわれています。電気は比較的早く戻る印象がありますが、水は思った以上に時間がかかるものです。もちろん公的なサポートは入りますが、できるだけ自分たちで備えておくことが大切になります。

夏の災害で困る3つの問題

  1. ライフラインの停止(電気・水・ガス)
  2. 命に関わる暑さ(熱中症)
  3. 衛生環境の悪化

夏の災害で困る3つの問題(ライフラインの停止・命に関わる暑さ・衛生環境の悪化)

今回は、このうち②の熱中症と、①に関わる「水の備蓄」を中心に伺いました。

熱中症は、誰にとっても身近なリスク

「病院に行くほどではないけれど、夏や海に行った帰りに頭が痛くなることが何度かある」——そんな経験は、多くの人に心当たりがあるのではないでしょうか。

森下先生自身にも、似たような経験があるといいます。なんとなく頭が重い程度で済むこともあれば、ある時それを超えてしまい、涼しい部屋で水分を摂っても回復せず、病院で点滴を受けることになったこともあるそうです。「まだ大丈夫」と思っているうちに進んでしまうのが、熱中症の怖さです。熱中症はとにかく早め早めの対策が重要で、災害時は特に、周囲で声を掛け合うことが一番の予防になります。

そもそも熱中症とは?

熱中症とは、暑い場所で体温の調節がうまくいかなくなり、体の中に熱がこもって不調が起きる状態のことです。

主な症状は次のようなものです。

  • めまい、頭痛
  • 吐き気
  • 呼びかけに反応しない、水分が取れない

とくに最後の「呼びかけに反応しない」「自分で水分が取れない」は緊急性の高いサインです。この段階になったら、ためらわず救急要請を。

熱中症のサイン(めまい・頭痛・吐き気・呼びかけに反応しない・水分が取れない)

なぜ起きるの?

熱中症が起きやすくなる条件は、大きく3つあります。

条件災害時に起きやすい理由
気温や湿度が高くて風がない停電でエアコン・扇風機が使えない、避難所や車内は空気がこもる
体の水分や塩分が足りないトイレを気にして水分を控えてしまう、食事が偏る
暑さに慣れていない、体調が悪い避難生活の疲れ、睡眠不足、慣れない環境

実は5月から、そして夜も危ない

熱中症は、意外にも5月ごろから発症する人がいます。まだ体が暑さに慣れていない時期こそ、注意が必要です。

さらに見落としがちなのが夜間です。熱中症になった人のうち、4割ほどは夜に発症しているといわれます。この時期は寝る前にも水分を摂り、高齢者や子どもも含めて家族みんなで気をつけることが大切です。寝苦しくて夜中に目が覚めたときは、知らないうちに汗をかいて熱中症に近い状態になっていることもあります。枕元に水を置いておくのも、ちょっとした備えになります。

【水の備蓄編】1人1日3リットルをどう備えるか

熱中症の話に入る前に、まずは水の話から。災害時にまず備えておきたいのは水です。目安は1人1日3リットル。4人家族なら12リットル、2リットル6本入りのダンボール1箱で、家族1日分の水になります。ただし、これは飲用が中心で、体を拭いたり鍋を洗ったりする余裕まではありません。最低3日分、できれば7日分、できるだけ多く備えておきたいところです。

水の備蓄、1人1日3リットルが目安。賞味期限の違う水の組み合わせ方

賞味期限の違う水を組み合わせる

森下先生が実際に備えているのは、賞味期限がそれぞれ違う水です。2リットルタイプは5年保存できるものを備え、普段よく使う小さいサイズは2年ほどのもの。自分で飲みきれるサイズは衛生的で、持ち歩くのにも便利です。もっと長期保存したい場合は、10年保存できるタイプもあります。

水の備蓄、1人1日3リットルが目安。賞味期限の違う水の組み合わせ方

水だけにこだわる必要はありません。お茶やトマトジュースも水の備蓄としてカウントしてよいとのこと。お茶であればご飯を炊くのにも使えるので、普段も飲みながら、災害時にもいろいろな使い方ができます。トマトジュースのように賞味期限が1年程度のものも、普段の暮らしの中で飲み切りながら備蓄する(ローリングストック)のがコツです。賞味期限を過ぎる前に、トマト煮込みなど料理に使えば無駄になりません。

段ボールに日付を書く、各部屋に分散する

箱買いした水は、ダンボールに大きく日付を書いておくと管理しやすくなります。どの角度で置いても日付が見えるようにしておけば、うっかり忘れることがありません。

もうひとつ見落としがちな工夫が「分散備蓄」です。各部屋に少量ずつ水を置いておくと、倒壊で部屋から出られなくなったり、扉が歪んで開かなくなったりといった「閉じ込め」にも備えられます。

【給水の準備編】水をもらいに行く「入れ物」を用意していますか?

どんなに備えても、水はいずれ足りなくなります。そこで必要になるのが、給水車や給水所から水を受け取るための「入れ物」です。実際に給水に行くには、何かしら入れ物を自分で用意しておく必要があります。

自治体の給水袋だけでは足りない

自治体が折りたたみの給水袋を用意してくれている場合もありますが、ある地域では1つの避難所に700枚しか用意がないケースもあります。生徒数500〜600人の学校が避難所になれば、家族も含めるとあっという間に足りなくなります。つまり、自分の分は自分で備えておく必要があるということです。

タンクとバッグ、それぞれの特徴

備え方には、大きく2つの選択肢があります。

水をもらいに行く入れ物、20Lポリタンクと折りたたみ給水バッグの比較

20Lポリタンク
入り口が広く、給水車から水を入れやすいのが特徴。使うときは床に置いて、蛇口から水を出せます。スペースに余裕があるご家庭向きですが、満水だとかなり重くなります。

折りたたみ給水バッグ(10L・20L)
使わないときは薄くたためて、収納場所を取りません。一方で持ち手が弱く、パンパンに入れると破れそうな心配も。パッカブルバッグやリュックに入れて運ぶのがおすすめです。

水をもらいに行く入れ物、20Lポリタンクと折りたたみ給水バッグの比較

「応急給水栓」を知っていますか

もうひとつ知っておきたいのが「応急給水栓」です。道路の水道のところから直接水を取り出せる設備で、避難所にセットで置いてあり、設置して水質検査をしてから使う流れになっています。避難所運営は地域の人たちがみんなで行うものです。存在自体を知らないと使えないので、地域の防災訓練で一度確認しておくのがおすすめです。

給水の準備は「入れ物を用意すること」と「どこに、どうやって取りに行くかを知っておくこと」、この2つがセットです。

熱中症対策:まずは基本の3つ

ここからは、いよいよ熱中症対策そのものです。基本的な対策は3つ。涼しい服装をすること、日差しをよけて体を冷やすこと、そして水分と塩分を補給することです。のどが渇く前に、こまめに水分をとることが基本です。

首を冷やす、実演してもらいました

電気がなくても首を冷やす方法(保冷剤とスカーフ、濡れタオルとうちわ)

普段から使えるグッズとして紹介されたのが、細い保冷剤をバンダナやスカーフに巻いて首に当てる方法です。首を冷やすと、汗の量自体を抑えられる感覚があるといいます。保冷剤が使えないときは、薄いハンカチを水で濡らして首に巻き、うちわや下敷きであおぐだけでも十分。気化熱で、電気がなくても涼しくなります。ハンディファンは便利ですが、充電が切れたら使えなくなってしまいます。だからこそ、うちわや扇子も備えておくことが大事です。小さく畳んで持ち運べる、実は優秀な道具です。日陰に入るだけでも体感はまったく違うので、涼しい服装・日陰と冷却・水分塩分補給の3つを、まずは意識してみてください。

断水時でもできる、衛生面の工夫

夏の災害は、衛生面でも過酷になります。数日間お風呂に入れない状況は珍しくなく、片付け作業で汗もかき、体も汚れる中、限られた水でどう清潔を保つかがポイントです。

ペットボトルのキャップに穴を開けてシャワーのように使うと、少ない水で汚れを落とせます。節水の工夫としてもおすすめです。髪の毛が洗えないときは、ウェットシートを指先に巻いて頭皮を拭くだけでもすっきりします。専用の髪用シートでなくても構いません。

塩分補給は、身近な食品から

水分と合わせて欠かせないのが塩分です。塩分チャージのタブレットは、2個ほどをバッグに入れておくと便利。家の引き出しに入れていても、出先で必要なときに手元にないことがよくあるためです。

タブレットだけに頼る必要はありません。家にある梅干しや味噌、塩昆布も、熱中症対策としてすごく有効です。朝、味噌汁を飲むのも対策の一つ。味噌にお湯かお水を入れて溶くだけで作れます。

断水時でもできる衛生と塩分補給のチェックリスト

今日からできる対策

すぐに取り組める備えとしては、次の3つが挙げられます。

暑さに慣れる
軽く体操をしたり、お風呂にしっかり入って汗をかいたりして、体を暑さに慣らしておきます。

食品と水の備蓄を見直す
災害時もしっかり食べないと夏バテになってしまいます。そのまま食べられるものも大事ですが、1日1回ぐらいは温かいものを食べたいところ。カセットコンロを備えておけば、お湯でパックご飯を温めておにぎりにすることもできます。栄養バランスも考えながら、しっかり食べられる状況を作っておきましょう。

声を掛け合う
家族で声を掛け合って気をつけていくこと。それをしないと、あっという間に熱中症になってしまいます。

今日からできる対策(暑さに慣れる・食品と水の備蓄を見直す・声を掛け合う)

熱中症に備える飲み物、正しい使い分け

「何を飲めばいいか」は、実はタイミングによって向き・不向きがあります。体を動かして汗をかいたときはスポーツドリンク、具合が悪くなってしまったら経口補水液が基本です。

ここで注意したいのが、経口補水液を飲むタイミングです。熱中症になってから飲むべきもので、なる前に予防目的で飲んでしまうのは避けたほうがよいとのこと。熱中症になった時に必要な濃度に調整されているため、必要ないのに飲むとかえって良くありません。スポーツドリンクも同様で、運動して汗もかいていないのに日常的に飲むのは避けたいところです。

飲み物向いているタイミングポイント
スポーツドリンク運動・発汗時日常的に飲みすぎない
経口補水液熱中症の症状が出てから予防目的で飲むのは避ける
味噌汁(具なし)予防にも、症状が出てからもOK経口補水液に近い飲み物。冷やしても温めてもよい
甘酒(麹から作る・ノンアルコール)予防にも、症状が出てからもOK"飲む点滴"。1日100mlほど
牛乳予防のみ(症状が出てからは不可)ロングライフタイプを備蓄

熱中症に備える飲み物の使い分け(スポーツドリンク・経口補水液・味噌汁・甘酒・牛乳)

甘酒には、麹から作るものと酒かすから作るものの2種類があります。酒かすのほうはアルコールが入っているため、選ぶなら麹から作るノンアルコールタイプ。「飲む点滴」と呼ばれるほど体にいいとされ、1日100mlほどで十分。数回に分けて飲んでも良いです。市販の小さいタイプで十分まかなえます。牛乳は予防のみで、熱中症になってからは回復の効果は期待できません。普段から飲んでおくのがポイントで、長期保存できるロングライフタイプを、本数を決めて備蓄しておくとよいでしょう。

いずれも大量に抱え込む必要はなく、使い切れる量をローリングストックするのがコツです。全部揃えなくても、「うちはこれ」というものが1つあれば十分です。

実践!経口補水液を手作りしてみる

防災リュックに入れる経口補水液の素、砂糖と塩を別々の袋に小分けするアイデア

対談の途中で、経口補水液の作り方を実演していただきました。ペットボトルで何本も備蓄するのは大変ですが、家にあるもので簡単に作れます。

経口補水液の作り方(1ℓと500mlの分量)

材料(1ℓあたり)

  • 水:1ℓ
  • 砂糖:40g
  • 塩:3g

材料(500mlあたり)

  • 水:500ml
  • 砂糖:20g(大さじ2)
  • 塩:1.5g(3本指でひとつまみ半)

ペットボトルは口が狭く、砂糖と塩が意外と入れづらいもの。できれば口の広い水筒がおすすめです。まず水を半分ほど入れて、砂糖と塩を先によく溶かしてから、残りの水を足すと作りやすくなります。レモン汁を少し加えると酸味が出て飲みやすくなります。また、麦茶で作る方法もあります。味は、率直に言うとほぼ薄い砂糖水のようなもの。決して「おいしい」というものではありませんが、飲みやすい味です。

⚠️ 注意:作った経口補水液は保存料が入っていないので、その日のうちに飲み切ってください。

分量を忘れないための工夫

分量は忘れてしまいがちなので、家中の水筒に直接書いておくのがおすすめです。500mlの水筒には500ml分、1.5ℓの水筒にはその分の分量を。計量が難しいときのために、お砂糖の容器には「大さじ1で10g」と書いておいたり、お塩は「3本指でひとつまみが1g」と覚えておくと、計りがなくても作れます。

防災リュック用の小分けアイデア

防災リュック用には、砂糖40gと塩を、それぞれ別々の小さいジップロックに分けて入れておく方法もあります。砂糖と塩を混ぜてしまうと、ちょうどいい状態かどうかが分かりにくくなるため、小袋は別々に分け、袋に経口補水液の分量を書いておくのがおすすめです。災害時、1リットルのペットボトルから少し水を減らして、そこに入れてシャカシャカ振れば、その場で経口補水液が作れます。

防災リュックに入れる経口補水液の素、砂糖と塩を別々の袋に小分けするアイデア

目安の摂取量

  • 子供〜成人:500〜1000mL/日
  • 幼児:300〜600mL/日

少しずつ、こまめに飲むのがポイントです。

電気がなくても「冷たさ」を持ち歩く

災害時にいちばん難しいのが、電気を使わずに冷やし続けることです。ここでWILLTEXのプロダクトが役に立ちます。

ICE ARMOR(アイスアーマー)

熱中症対策として開発された特殊低温保冷剤です。一般的な保冷剤より低い温度を、より長時間キープできるのが特徴。凍らせておけば、停電中でも冷たさを保ち続けます。首元や脇の下に当てて体を冷やすほか、飲み物や食品を冷やす用途にも使えます。

WILLCOOK(ウィルクック)

布が発熱する特許技術から生まれた、カバン型のポータブルレンジバッグ。加熱調理のイメージが強いプロダクトですが、断熱綿と高遮熱アルミフィルムを使っているため、バッテリーなしの保冷バッグとしても優秀です。

以前WILL NOTEで行った実験では、常温のペットボトルの水をICE ARMORと一緒にWILLCOOKに入れておいたところ、電源を一切使わずにキンキンに冷やすことができました。

災害時は「冷やす」も「温める」も、どちらも必要になります。ひとつで両方をまかなえるのは、限られた荷物で避難するときの強みになります。

ICE ARMORとWILLCOOKを組み合わせた使い方

まとめ

夏の防災「熱中症」は早めの対策を、まとめ

熱中症はとにかく早め早めの対策を。災害時は本当に、声を掛け合うことが一番だと森下先生は繰り返し話していました。

水の備蓄、給水の準備、涼しい服装、日陰と冷却、水分と塩分の補給——特別な道具がなくても、今日から始められることばかりです。

濡れたタオルを首に当ててみる。経口補水液を一度作ってみる。ダンボールに日付を書いてみる。折りたたみの給水バッグを探してみる——どれも、今日から試せることです。

真夏の災害で命を落とさないために。まずは一つ、試してみませんか。

監修:森下園子(ポリCOOK® 代表/防災士・日本災害食学会 災害食専門員)


備蓄のお茶・トマトジュースをWILLCOOKレシピで美味しく

水や食料の備蓄は、備えて終わりではありません。賞味期限が近づいたら、普段の食事の中で使い切りながら入れ替えていく「ローリングストック」が基本です。お茶やトマトジュースを使ったレシピがあります。備蓄の入れ替えのタイミングで、ぜひ活用してみてください。

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